【ネットで映像伝送】ネットで高品質の映像伝送をする場合のテクニック


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インターネットで高品質な映像伝送は可能か?

インターネットでコーデックを使って高品質な映像伝送を行う場合、数十秒程度の遅延が発生して良いならば、インターネット経由でも、光回線で接続しており、配信パソコンから安定して20Mbps程度が出る回線ならば、Youtube配信などの方式では、高品質(フルHD〜4K)のライブ映像伝送ができます。ただし、配信で使用するパソコンのスペックが低かったり、インターネットに接続するスループットがは帯域が安定しない場合は、配信が途中で止まったり不安定になることがあります。

・配信パソコンから上り20Mbps程度のスループットが安定して出る
(光回線を使用、有線での接続を使用する)
・配信パソコンのスペックは低くない

ただし、そもそもインターネットではスループットは確保されておらず、途中で配信できなくなったり、不安定になる可能性がある前提で考えておかないといけません(とは言いつつ、最近、Youtubeライブは結構安定しています)

どうしてもインターネット経由で映像伝送が必要な場合は、ビジネス用のISP契約として、フレッツもビジネスタイプにして、同じISP同士での通信としたほうが リスクは下がります。

失敗できない・遅延に厳しい映像伝送の場合はイーサ系かVPN

失敗できない映像伝送・遅延に厳しいライブ中継などの場合は「ビジネスイーサワイド」などの帯域確保型のイーササービスがおすすめです。でもイーサ系サービスは高額なので、ベストエフォートでも、インターネットを経由しないVPNとなる、NTT東西のフレッツVPNが次 の選択肢となります。

やはりリスクを限りなく抑える場合は、帯域が確保できる回線がベストです。帯域の確保ができないベストエフォート回線を使用する場合は、映像がロスするリスクがあります。最近はフレッツでも、IPv6で直接通信できるオプションがあり、IPv6だと比較的安定的にスループットが出る場合が多いので、IPv6で直接伝送する方法もあります。

1位:イーサ系サービス(帯域確保)
 なお、可能ならばバースト許容または、10M/100M/1Gbpsなどの物理IF速度とマッチした帯域

2位:フレッツVPNワイド、VPNプライオ(または、v6オプション契約をして、IPv6 VPNを張って通信)

3位:インターネット経由:ビジネス契約のISPと、フレッツのビジネスタイプ(拠点間は同じISP)

4位:インターネット経由:通常のISP契約と、フレッツの一般向けタイプ(拠点間は同じISP)

それ以外はやめたほうがいいです。下位に行くほどリスクが高くなります。

映像伝送で必要な通信帯域は?(ネットワーク帯域)

映像伝送用コーデック(エンコーダ・デコーダ)を使用して高品質な映像伝送を行う場合に必要となる通信帯域についてご案内します。

映像で使用する帯域の目安は?

映像の帯域は「良好な品質 〜最高品質(これ以上レートを上げても品質は変わらない)」の範囲で記載しています。

ネットワークで映像伝送する場合、CBR(固定ビットレート)の設定がおすすめです。

VBRの場合、動きが速かったり、細かな変化が多い映像で使用する帯域が増加し、契約ネットワーク帯域をオーバーする可能性があるからです。

ただし、CBRの場合、動きが速かったり、細かな変化が多い映像の場合、映像にノイズ感が出るなど、映像が劣化します。

映像種別 H.264で圧縮 H.265/HEVCで圧縮
HD (1,280x720) 60fps [720 60P]  6〜15Mbps  4〜10Mbps (平均8Mbps)
FullHD(1,920x1,080) 30fps [1080 60i]  8〜25Mbps  6〜12Mbps (平均10Mbps)
FullHD(1,920x1,080) 60fps [1080 60P] 10〜30Mbps  8〜15Mbps (平均12Mbps)
4K (3,840×2,160) 60fps [2160 60P] 50〜100Mbps 25〜50Mbps (平均35Mbps)
8K (7,680x4,320)  60fps [4320 60P] - 100〜200Mbps(平均150Mbps)

※リアルタイム映像伝送の場合、動画編集ソフトなどで生成するファイルの映像レートよりも増加します。(リアルタイムでエンコードするため、エンコード処理を高速に行う必要があり、非リアルタイム処理処理よりも圧縮率などが低くなります)

イーササービスなどギャランティー型の回線で映像伝送する場合の注意点は?

●通信回線の契約帯域として必要となる帯域は、上記の映像の帯域の「1.2倍」は確保しておいた方が良いです。(FECを使用する場合は、更に増加)

●品質が高い、帯域確保型ギャランティーネットワーク(NTTのビジネスイーサなど)では、瞬間的にでも、契約帯域を超えた分のデータはバッサリ落とされます。(契約帯域を超えた分は廃棄されます)特に瞬間的にバーストする場合でも廃棄されるので、きっちり「シェーピング」して送出されるように注意が必要です。

●映像伝送の場合は、データのロス=映像の乱れ として直結します。中途半端な帯域を契約する場合(例えば20M,30M, 40M, 50M, 60M, 70M, 80Mbps と言った、10Mbps, 100Mbps, 1Gbpsの帯域でない場合)は、超過しても廃棄されない可能性がある、一部帯域確保型サービス(バーストプラン)がおすすめです。

フレッツなどの安価なベストエフォート型の回線で映像伝送する場合の注意点は?

●インターネット経由での高品質映像伝送は、安価ですが、日や時間帯によって通る帯域に変動があります。リスクを承知で使用する必要があります。

●フレッツVPNなどは比較的品質が高いと言われていますが、共用型で、帯域は確保されていません。そのため稀にパケットがロスすることを前提で設計する必要があります。(ARQエラー訂正機能などの使用や、バックアップ用途での使用にするなど・・・)

●フレッツの「ビジネスタイプ」の方が、共用しているユーザ数が少ないので、確率的に、ロスする可能性は低くなると言われています。(ただし、同じ収容装置に大量のトラフィックを使用するユーザが入っている可能性もあり、保証はない)

 

エラー訂正について

●フレッツなどのベストエフォート型の回線を使用する場合は、パケットがロスする可能性があるため、ARQ方式の使用が必須です。

  FEC方式 ARQ方式
使用帯域の増加 連続してパケットがロスした場合などは、救済できない場合がある(方式によって特性が異なる) 再送するためかなりの高精度で救済可能
エラー救済の精度 方式により、定常的に10〜20%のFEC用のデータが増加する ロスしたときだけ再送するので、定常的には増えない
遅延時間の増加 数〜数十msec程度 再送のためのバッファ待ち時間のため、常に3~5秒程度の遅延時間が必要となる。長いため、掛け合いなどの利用には難しい
規格 規格化されているので互換性は高い(ただし、メーカが保証しているエンコーダ・デコーダでの組み合わせの使用がおすすめ) メーカーや装置によって実装方式が異なる場合が多く、エンコーダ・デコーダの組み合わせに注意が必要

 

高品質・高信頼性が求められる映像伝送時の注意事項

ライブイベントなどの高品質な映像伝送をする場合、トラブルの可能性を極限まで下げておきたいものです。

特にネットワーク部分でのトラブルは、ライブイベントなどでは命取りとなります。

いくつか注意事項を記載しておきます。

回線の契約は、とにかく早めに!

場所によっては、電柱を立てたり、土管を掘ったりして、光ファイバーの敷設から始まる場合があります。

とにかく、通信会社へ回線の契約は早めにしておいたことに越したことはないです。

できるだけ余裕を持った開通と、事前試験を

イーサ型サービスの場合、料金が高いので回線の利用期間はできるだけ短くしたいのですが、事前に十分なテストができていないと、思わぬトラブルになることがあります。少しもったいないですが、余裕をもって開通しておいた方が良いです。

極力経由するルータ(NW機器)の数を減らす

映像伝送で、経由するNWスイッチやルータなどNW機器の数は極力減らしましょう。経由するルータやNW装置が多ければ多いほど、思わぬトラブルの原因となります。ベストはルータを"使用しない" で直結です。

回線・ルータを他の用途の通信と共用しない

映像伝送で使用している回線やルータなどの通信機器で、同じVPNでパソコンでファイル転送なども一緒にするなど、他の通信と共用して使用することは多いと思います。

同じ回線や同じネットワーク装置に、複数の通信が混ざると、思わぬトラブルが発生することがあります。

例えば、ファイル転送で帯域を占有してしまい、映像が通らない場合などもあります。(ファイル転送はTCPなので、映像伝送のUDP通信の帯域を食ってしまうこともありえます)

トラブル発生時に、原因区間の切り分けも難しくなります。映像伝送で使用する回線と通信機器は必ず分けましょう。

映像伝送ではルータの機能をできるだけ使わない

ルータに備わっている負荷分散機能や冗長機能などもありますが、映像伝送ではルータについているこれらの機能はできるだけ使用しないようにしましょう。

優先制御の設定なども思わぬトラブルの原因となりますので、可能な限り使用しないようにしましょう。

シェーピング機能も、映像伝送装置(エンコーダ)に備わっていますので、ルータでの設定は原則不要です。

また、冗長経路を使用する場合は、映像伝送装置についている冗長経路機能(複数IFでの送出など)を使用しましょう。NW側で冗長経路設計を行うとトラブルの原因となります。

複雑なIP設計をしない

映像伝送を行うネットワークは、可能な限りルーティングをシンプルにしておきましょう。

複数のネットワークをまたいで映像伝送を行うようなネットワークは避けましょう。ダイナミックルーティングはトラブルの要素の一つになります。ECMPもやめましょう。

本番中などにトラブルが発生した場合、致命傷となります。

MACテーブルが消えることも

映像伝送は、エンコーダからデコーダでの一方通行の通信が多くなります。

デコーダ側からの通信が一切無い時間が長時間続くと、ルータやスイッチのMACテーブルが消えてしまい、通信ができなくなることがあります。

映像伝送装置の設定などで、定期的双方向の通信を発生させるようにしましょう。

イーサネットのネゴシエーション帯域に注意

IF速度がAUTOになっている場合、IF帯域が回線と整合しているか確認しましょう。回線の契約帯域が100Mbpsなのに、映像送出側IFが1Gbpsになっていると、思いっきりパケットがバーストして送り出され(最大1Gbpsで送出!)、パケットロス(ネットワークで帯域を超えたので廃棄される)の原因となります。

映像系専用機を使用しない場合、パソコンから映像伝送する場合にも注意

パケットを「シェーピング」して出力できる(バースト的にパケットが送出されず、一定の間隔でパケットを送出する)機能がついたネットワーク映像伝送装置を使用するならば問題ありませんが、パソコンから映像送出をする場合、IFの帯域いっぱいでバースト的にパケットが送出され、帯域を瞬間的に上回り、回線で廃棄されるというケースがあるのでご注意を。その場合は、シェーパー機能(シェーピング機能)があるルータを挟みましょう。